とある烏の物語
しかしこのままではからすは殺され、売られてしまうでしょう。

ついにからすはこの街を離れる事を決意したのでした。

ですがあの少女に何も言わず行くことはできません。
そして今日もいつものように青い家の窓をたたくのです。

コンコンと軽い音を聞くと少女は読んでいた本から顔を上げフワッと顔を綻ばせました。

「こんにちは、からすさん。
今日も面白い話をしてくれるの?」

からすは少し目線をさげ静かに首を横に振りました。
『いいえ、今日は大切なお話があって来たのです。』
『実は私はこの街をでなければいけません。
あなたとお話が出来なくなるのは悲しいですが、このままでは殺されてしまうでしょうから。』

少女は驚いたようでその瞳をまんまるに大きく開きました。

「えっ…そんな。嫌よ。行かないで、お願い。」

少女は目に涙を浮かべていいました。

からすはそんな少女を見ていられず下を向いていいました。

『あぁ、私も悲しいのです、お嬢さん。このままあなたといられたらどんなによいか。』

泣きそうに言い放つからすを見て少女は少し理解したようでした。

「からすさん、私はとっても悲しいわ。…けれど、それでからすさんが殺されてしまうのはもっと嫌よ。…仕方ないことよね。」
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