そう、これが愛





「歌己、あんた」

「ね、人間じゃないでしょ?」


隣に座る桐谷 大地 本人であろう人物の顔には先程信者かのようにワカメワカメと讃えていたワカメ様が大量に引っ付き妖怪大事典に載ってそうだ。


「・・・・・・・・」

「ちょっ、歌己、大地さん怒ってるよこれ、謝ったほうが」

「だって・・・・きもくて直視できない視覚の暴力だよコレ」

「怒ってないし、大丈夫」

一つ一つ顔からワカメを取る桐谷もどきは全てのワカメを取り終えるとにっこり笑った、馬場 望ちゃんはポーっと頬を染めて見つめているが、奴の口についたワカメを取り忘れている事教えてあげてほしい。そうかこれが惚れこんだら周りが見えないという事か。


「歌ちゃん、口についたワカメ取ってV」



「はい、取れました」


しょうがない、と平手打ちで取ってあげたらビックリしたのか周りの女性達が叫び出した、ビックリした。
ワカメ様が取れたであろう桐谷さんに目線をあげるとにっこり笑ってありがとうと言っているがピンクに染まった頬とうっとりした目元、鼻から垂れる赤い液体に私の身体が凍りつき尽かさず椅子から立ち上がる。


「歌己ちゃんこっちにおいで」


腕を引っ張られ桐谷さんから距離があく。


「ぶ、部長」

「だから言ったでしょ?すぐ誰かと一緒に居るんだからもう」

桐谷さんから守るように桐谷さんを睨みつける部長。

「部長・・・・・・・ゴム手袋で掴むの止めてください」

「だって素手で触るなんてできない!!」

「じゃ掴むんじゃねーよ」

人の腕をゴム手袋着用で掴むとかどんだけだよ、でも何だかんだ助かった、部長が来てくれて安心したと思ってしまった。胸糞悪いが。


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