そう、これが愛
てめぇだよ、なんて軽口を言っちゃいそうになったがごきゅんと飲み込んだ
目の前で携帯片手にふふっと笑う桐谷さんはなんだか知らない人みたいで、
いや、間違えた知らない人だ。間違いない。警察に連絡しなくては。
「・・・・・・・」
「歌ちゃーん?聞いてた?悪ーい奴が来たらどうするの?」
「豚箱に行けるように手配します」
「豚箱!?」
「はい、豚箱です正式名所は刑務所とも言います」
桐谷さんは携帯をポッケに突っ込み、少し申し訳なさそうに笑った
彼でもそんな表情をするのか、とぼんやり思っていると頭に少し重みを
感じるとその正体は桐谷さんの手のひらだった。
「ごめんね」
「・・・謝るのならだったら始めからしないでください、豚箱は無しにしてあげます」
「うん、それもなんだけど、ちょっとビックリさせようと思っただけで・・・・まさかここまで怖がらせちゃうなんて、ごめん歌ちゃん」
「・・・・・・・大丈夫です」
自分ではわからないが、私は思いの他かなり情けない顔を
しているんだろう。じゃなきゃ人にこれだけ心配はされない。
今だ私の頭を撫でる桐谷さん少し困った様に笑っている
それが少し可哀想でもう一度大丈夫ですと少し笑うと桐谷さんは小さく息を吐いたのが
わかった。
「俺が来たからにはもう安心だよ♪」
いつものうっとうしい桐谷さんにものの数秒で戻った
「はい安心したので帰っていただいて結構ですよ」
「それだけ?他にはないの?」
「ご苦労様です」
「・・・・うん、もうそれでいいや、どういたしまして」
と、遠慮って何それの如くソファーに座る桐谷さん
部長の事もあったので一人になりたかったのだが、どうやら彼は
帰る気はないらしい。かといっていつもの勢いも今の私には
出ないので、桐谷さんのご要望に答えられそうにないそう伝えれば
彼もいつもの刺激的なスキンシップが無いとなると諦めて帰るだろう。