そう、これが愛

鮭が入っている発泡スチロールを両手で抱え、大学内を歩く


「朝市のおじさんまだいるかなー?」

この後講義が入っているが私の中で優先順位は銀子(銀鮭)をさばいてもらう事だ
部長には何が何でもこの鮭を受け取ってもらいたい、お詫びの印(市場で値切った汗と涙と唾の勝利品)の品物なのだから意地でも受け取ってもらう


おいしょっと少し歳老いた掛け声で勢いをつけ銀子を持ち直す・・・銀子重いなさすが一級品!!

「あの、良ければお持ちしましょうか?」

「・・・・・」

「あの?」

「・・・・ん?」

フと後ろを振り返る。もしかしてさっきから私に話かけているのか?

「その、怪しい者ではないです・・けして。あの重そうなので俺で良ければ運ぶの手伝います」

もしやこのカプチーノ色の髪の男性はこの19年間私が待ちに待った王子様か何かですか?神様仏様お母様。


「あの、ええーと?・・・」

この人畜無害な感じもの凄くタイプだ・・・ええーととか何何何!?可愛い!!
しばらく自分に舞い降りた奇跡にポーっとしてしまったが
途端脳内で非常ベルが鳴り響く


「あ・りがとうございます」

緊張してしまい上ずってしまった。王子は「ああ、良かった」とばかりに
ほぅっと息を吐きヘナっと顔を緩めて、それさえもタイプだこりゃマズイな。


「はい、持つね?これどこに運ぶ予定なのかな?」

自然に私から銀子を手に取り「お、結構重いんだね」なんて笑う

「朝市に」

「え?朝市?市場の?」

「はい、朝市です市場の」

「市場?あ、コレお魚なの?」

「一級品の鮭ですね」













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