オアシス
……?

あまりにも呆気ないセリフだ。立ち上がり尻の砂を払う準平を、私は座ったままポカンとして見上げていた。

「どうした?」

「いや、何でも……」

言葉の途中で準平は私の手を取り、ひょいと立ち上がらせた。私は準平の手を離したくなくてギュッと力を込めた。

準平はハッとして私を見たが、準平はそんな時でも冷静だ。

「みんな心配してるよ、きっと」

「はい……」

私達は手を繋いだままテントを目指し砂浜を歩いた。思っていたほど遠くなくて、どこからか甲高い女の声が聞こえてきた。菜々だ。いっちーの声も聞こえる。段々と近づいてきたところで準平は私の手をほどいた。

「みんなに見られたらマズいだろ?」

「そうですね……」

何だか寂しい気持ちになったが、思いがけないハプニングで嬉しい気持ちもあった。[まさか準平があんなことを]クールで硬派な準平が、本当は優しい気持ちを持っている人なのだと思うと、私の気持ちはもっと準平のことを好きになりそうだった。
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