オアシス


「眠れないの?」

……!!!

背後から声がして、驚いて振り向いたら聡がしゃがみながら優しい笑顔を向けていた。私は、何を言っていいのか言葉が見つからない。

「あ……」

「何?」

「あまりにも綺麗すぎて、つい独り言が……」

「そうだね」

……。

「今日、楽しかった?」

「はい」

……。

急に聡から笑顔が消えた。

「……どうしたんですか?」

「別に」

……。

「何か、眠れなくてさ。あんな狭いテントで三人はキツいよ。しかもいっちーの奴、いびきうるせーし」

「あぁ~……そうなんですね」

生ぬるい風が、ゆるやかに吹き抜けていく。

「あ、でも、あいつ……準平がさ、テントは狭いからって言って車で寝るって」

「そうですか……」

聡は砂の上に寝転んだ。

「君に会えて、良かったよ」

……!!!

思わず聡に目を向けた。暗いなかでも、月明かりでほのかに聡の顔を見ることができた。ものすごく切ない感情が押し寄せて、涙が溢れた。
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