オアシス
「このまま、どうなるのかと思いました……よかった……」


私は、こらえていた涙がついに流れ、とめることができなかった。泣いている私を見た男は、一瞬面食らってオドオドしていたが、やがて落ち着いてこう言った。


「見捨てたりしませんよ」


そのあたたかい一言に、胸が痛くなった。

すごく、有り難い気持ちになった。

情けなくて、恥ずかしくて、泣き顔を見られたくなくて下を向きっぱなし……。


「よし! 行きましょう」


男にそう言われ、私は頷き、立ち上がった。さっきまでの私が嘘のようにケロッとしている。新宿で乗り換えの電車の中で、私達はずっとおしゃべりをしていた。……と言うより、私が一方的に話していたと思う。地元の話や高校時代のバイト先の話など、機関銃のようにベラベラと喋りまくった。この男は優しいし親切だし、一緒にいれば安心だ、と思っていたからまるで友達のような会話の仕方をしていた。
< 13 / 123 >

この作品をシェア

pagetop