オアシス
やつれたクラい顔の女……。目の下には真っ黒いクマができている。見るに見かねる気持ち悪い顔……。

……私だった。

別人かと思うくらいの、自分だった。もう、喋るのも面倒くさい。気がつけばスローペースで歩いていて、颯爽と歩くことはできなくなっていた。ベッドに座ったままソファに放り投げた鞄を取り、財布の中身をチェックする。1588円しかなかった。これが、私の全財産だ。ここのホテルにはあと数日泊まることができた。前もってまとめて料金を払ってあったから。

鞄の中身をひっくり返してみる。何か食べ物があるかも知れない……。

食べ物が……

あるかも知れない……

と、その時……心臓がビクッとした。

嘘……!

チロルチョコが二個……

私は、一瞬だけ救われたような気がした。

それと、さっき駅前でもらったチラシが視界に入った。まったく見ないで鞄の中へ入れたので、今になって何のチラシか見てみる。
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