オアシス
私は、一口も飲んでいないアイスココアを見つめながら考えていた。


「今すぐ返事じゃなくてもいいわよ。考えが固まったらまたお電話さふしてね。あ……アイスココア、飲んで」

「はい……」


運ばれてきて一口目のアイスココアは、上京二日目に渋谷で飲んだ時のことを思い出した。


「じゃ、これで終わります。もし、あなたが良い方向で考えてくれたら、その時に簡単に履歴書を書いてもらうわね」

……。

「今日はお疲れさまでした」


そう言って女性は、伝票を持ってレジへ向かう。

二人分の会計を済ませ、女性は私の方をチラッと見て微笑んだ。私も会釈をする。


カラカラカラ……


入口のドアを開けると、取り付けてある大きい鈴が鳴った。


パタン……


女性は静かにドアを閉める。

向かえに座っていた女性がいなくなり、私は二口目のアイスココアを飲んだ。知らぬ間に氷も溶けてグラスが汗をかいている。
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