オアシス
“何か言え!”


怒鳴られても答えなかった。

一瞬驚きのあまり体がビクッとしたが無言を貫き通した。


“もういい!どこにでも行け!”


父親は捨て台詞を吐き、その場を離れた。

私は、申し訳ないという気持ちはほとんど無く、むしろ嬉しい気持ちとホッとした気持ちで胸を撫で下ろす。


“なんだかよくわからないけど……でも……お父さんがそれでいいなら仕方ないわね……”


母親も渋々納得した。何か言いたげだが、我慢しているように見えた。


“わーい!東京だ東京だ〜!”


妹が自分のことのように喜んでいる。了解を得られて良かった。と言うよりほとんど無理矢理だけど。自分の部屋で窓の外の街の灯りを眺めながら、私は東京ライフを想像してみた。

不安など無く期待で胸がドキドキしていた。

そして、一ヶ月後に上京を決めた。

私は高校一年生の頃からコンビニでアルバイトをしていた。
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