オアシス
「よし! 当ててみるよ。瞳の好みは……」
私は心臓が破裂しそうになりながら菜々の目をじっと見た。
「……聡君」
「……?」
「ギターの、聡君」
菜々は、大きい目をキョロキョロさせながら言った。
なぜかしら私の破裂しそうだった心臓の爆音は静まり返っていった。
……と思ったのもつかの間。
「聡君と準平君は兄弟だから」
「は?」
「聡君がお兄チャンで、準平君が弟チャン」
そう言って菜々は、ジンジャエールを飲み干した。
「はぁ~……もうおなかいっぱい。ここのピザ、結構おいしかったね。そろそろ帰ろうか」
菜々はどこまでもマイペースだ。
私達はここのイタリア料理店にダラダラと何時間もいた。気がつけば、日付がかわる時間も近づいていたので急いで帰ることに。私と菜々は家が反対方向なので、駅の改札口でお別れをした。
都会の電車はいつでもどんな時でも人がいっぱいだ。ホームも車内も人だらけ。空いている時を見たことがないくらい、いつも人が密集している場所のひとつが電車のホーム、車内。