オアシス
考えると、ドキドキしてきた。
待ち合わせ時間の10分前に着き、菜々はずっとキョロキョロしている。人ゴミの中で、すれ違いにならないようにマメに携帯もチェックしていた。
「人が多すぎるよなぁ、東京は。見つけられるかな……」
菜々が一人言のように呟いたのも、つかの間。
正面から三人の若い男がこちらへ向かってくる。
三人共、見覚えのある顔。
私は三人に気づいたけど、菜々は気づいていない。逆の方を見ている。
その三人の中には、例のあの男……準平の姿もあった。私は気づかれないように下を向いた。どうしてかはわからないが、準平に気づかれるのが何となく恥ずかしかった。
「お疲れ!」
「おぉ~! お疲れ~!」
顔を上げると男達が立っていた。親しげに、菜々と挨拶なんか交わしながら。
準平は少ししてから私の存在に気づいた。ものすごく驚いた顔をして私の方をじっと見ている。何か言おうとして唇がかすかに動くが言葉に出せないでいる。