オアシス


「じゃあ、とりあえず居酒屋でも行くか」

いっちーが仕切り、五人は新宿駅近くの居酒屋へ入った。平日だというのに、結構混んでいる。席は小上がりしか空いてなかったので、そこの席に座った。私と菜々が並んで座り、男達は向かえに三人並ぶ。私の斜め前には準平がいた。

とりあえず私と菜々は烏龍茶にし、男達三人はビールを注文する。

「よーし! 乾杯!」

それぞれが、それぞれのグラスに乾杯をする。私も準平のグラスに自分のグラスを当てた。まともに目を見れなくて、菜々の指先を見た。

適当に頼んだ料理が次々と運ばれてくる。

私は緊張してなかなか食べることができない。

しかしまわりに合わせて鳥の唐揚げをひとつ取り皿へ。普段はアゴがはずれるくらいの大口でハンバーガーやパスタを食べるのに、今だけはそれができなかった。

「なぁ、小西。まだ、紹介してもらってないんだけど」

いっちーが私の方をチラッと見た。〈小西〉とは菜々の本名だ。

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