オアシス
「あ~、ごめん。同じ職場の、朝比奈瞳ちゃん。私と、タメ」

「へぇ~。失礼だけど、かわった苗字だね。芸能人みたいな名前だなぁ」

「そ、そうかな……あ、ちょっとトイレ」

菜々は私の手を引っ張り慌ててトイレへ駆け込んだ。

「何~? 菜々どうしたの?」

「はぁ~、危ない危ない」

「だから何?」

「私さ、いっちーに今の仕事のこと言ってないんだよね。ってか言えるわけないんだけどさ……」

「あ……そっか」

「だから何か焦っちゃって」

「大丈夫だよ。絶対に言わないから。まぁ、私も菜々と同じ仕事してるから言えないんだけどね」

「うん……。でも良かった~。瞳に口止めしとくの忘れた~! と思ってすっごい焦ったよ。それに、朝比奈瞳って芸能人みたいな名前だねって、いっちーが言ってたし……バレるかと思った」

「私の方こそ焦ったよ~」

「ごめんね~。気が動転しちゃってたから、瞳の本名ド忘れしたの~」

菜々は、両手を合わせ〈ごめん〉のリアクションをした。

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