オアシス
私達は、ただそんな話をするためだけにトイレに来たが、すぐに席に戻る。

いっちーが、

「何だよ何だよ。二人してトイレか?」

「ハハハッ……偶然偶然! それより、みんな飲んでる?」

「あぁ、もう酔っ払ってきた。……まだ紹介終わってなかったよな。バンドではベース担当の英明」

「ども」

英明はペコリと頭を下げた。

「で、こいつがボーカルの準平」

準平は、私と菜々にそれぞれ頭を下げた。何も言わずに。

「他のメンバーはちょっと用事があって来れなかったんだよね。ギターの聡と、ヤス」

いっちーは軽く言い流し、残りの半分のビールを飲み干した。

「そっかぁ。次の飲み会の時は、他の二人も連れて来てね。……ってか紹介いらなかったよ。ライブの時、メンバー紹介してたじゃん」

「あ、そっか」

仕切り屋いっちーに、誤算。

「瞳、全然食べてないし全然喋んないじゃん」

私が返答に困っている時も、準平は斜め前にいる私を見ていた。

どうしよう……。
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