オアシス
アパートの階段を上がり、鍵を差し込む。

中へ入るなり、

“うわっ……”

八畳のワンルームの部屋はゴミ収集所のようになっていたのと、暑さがこもって蒸し風呂状態になっていたのとで、一瞬胸が悪くなった。

稲垣はるかは、両手にスーパーの袋を抱えたまま、部屋に入るなり大きいため息をついた。

こんなに狭い部屋なのに、真ん中にはつい立てが置かれ、一応区切られた部屋となっている。仕切られた間取りは四畳ずつ。

特に台所側は狭かった。

四畳の間取りは、どちらとも散らかっている。

服は脱ぎ捨てられ、CDや雑誌が積まれ、ゴミ箱の中は紙が丸めて捨てられていた。明らかに、男の部屋とわかる。

「またかよ……」

はるかは窓を全開にし部屋を片付けはじめた。

台所のシンクには洗ってない食器が積んである。洗濯機を覗くと洗濯物がどっさり……。

「どうして毎回毎回こうなるの……」

思わず出た一人言にも虚しさを感じる。

< 56 / 123 >

この作品をシェア

pagetop