オアシス
Vol.6〈少しずつ、動き出す〉
〈Vol.6〈少しずつ、動き出す〉〉
今日も、朝から雨だ。家を出る時、梅雨独特の湿った空気にクラッときた。一日中、窓のない個室で仕事をしている私には外の天気などわからない。わかるのは出勤前と出勤後だけ。店長が、今日は雨だから暇ね。とか、客が雨に濡れたまま来店した時しか外の状況はわからなかった。
私は風俗という仕事を辞めずに続けている。体を売る商売に抵抗がないと言えば嘘になるが、今のところ辞める理由がないから……続けている。だが誰にも言えず親や地元の友達には、コンビニを掛け持ちで働いている、と嘘をついている。高校時代は実際コンビニでバイトをしていたから、親や友達は、あんたコンビニ好きだねって笑って言っていた。
今日は暇だ。やはり天気に左右されるのだろうか。
私は待機している部屋の中でボケーッとしていた。こないだの飲み会のことを思い出す。準平のことを……思い出す。
誘われたライブでは、準平が歌っていた。そしてそのつながりで、飲み会では準平に会うことができた。