オアシス


何だか、それが妙に寂しく感じた。

私は、着信履歴を開いてみる。聡の番号が目に入った。

丸山聡……準平の兄。

さっき電話で喋った時の印象としては、かなり感じが良かった。ただ一方的に切られたのは別として。

“電話、してもいいかな……”

私はドキドキしながら発信ボタンを押した。

七回目のコールのあと――

留守電に切り替わった。

ふぅ~……

なぜか安心してしまう。電話で話したいという気持ちと、電話に出ないで、という気持ち。



すると、



けたたましい音が部屋中に鳴り響いた。さっきの番号だ。……ということは、

「はい」

「もしもし……」

「あ、あの……朝比奈です」

「朝比奈さん! どうしたんですか?」

急に優しい言い方になる聡。

「いえ……これといって特に用事はないんですけど……ただ電話しただけです」

「そうなんだ」

「あの……弟さんは……」

「弟? 準平のこと?」

「はい!」

思い切り返事をした。
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