オアシス
「準平がどうかした?」
「前に、お世話になりまして……」
「あ、ちょっと待って」
後ろの方で、微妙に話し声が聞こえ、
「もしもし。弟の準平です」
「え? あ、こないだはありがとうございました。……こないだじゃないですね、すみません」
「浜松町で、迷子の?」
「はい……すみません」
「何で謝るの?」
「いえ……何となく」
私は気が動転して何を喋っていいかわからず、謝っているばかりだ。
「ライブに来てくれたみたいだし、飲み会でも会えたしね。こんなに、偶然が重なるなんてね……」
準平は少し、はにかんだように言った。
私は返す言葉がなく黙ってしまった。
「じゃあ、兄貴にかわります」
……。
「あ、何回も行ったり来たりでごめんね」
「いえ、そんなことないです」
「今度ライブある時に、連絡します」
「はい……」
……。
「突然、電話してすみませんでした」
「全然大丈夫だよ。どうせ暇してたし」