オアシス

まさか、

まさか、

まさか……

こんな展開になろうとは……。

電車に乗るべきはずが私は無意識のうちにどこかへ向かって歩いていた。どこに向かっているかはわからない。

とにかく、悲しいのと腹立たしいのとで頭がパニックだった。涙が出そうだ。

行き交う車のライトが私を照らす。眩しくて顔を背ける。するとからかうようにクラクションを鳴らされた。無性に腹が立った。

駐輪場の横を通りかかった時、怒りは頂点に達していたせいで自転車を思いきり蹴飛ばした。綺麗にに並べられていた自転車は、将棋倒しになった。

“ざまぁみろ”

私は意気揚々としていた。すると、

「まったく……何やってんだよ」

……！！！

恐る恐る振り返ると、準平が呆れた顔で立っていた。

「あ……」

「あ、じゃねぇだろ。あ、じゃ」

……。

「ほら、片付けるぞ」

準平は一台ずつ自転車を起こし丁寧に並べ直していく。

私は自転車を並べ直している準平の横顔をじっと見つめていた。