オアシス
「どうしたの?」
「何でもないです」
私は慌てて準平と一緒に自転車を並べ直していった。
すべて終わり、準平が、
「うちのメンバーが、心ないこと言って、ごめん」
……。
「ほんと大人気ないよなー……あいつら」
準平は、ジーンズのポケットに両手を突っ込み、夜の空を見上げながら言った。
「さっきいた、あの女の人は……」
「あー、知り合い」
……。
「親父さんが音楽関係者のお偉いさんでさ。俺達みたいなアマチュアなんか相手にもしてくれないはずなのに、はるかが俺達のために色々協力してくれてるんだ。要は、コネってやつ」
「そうですか……」
「うん」
「あ、自転車、ありがとうございました」
私が踵をかえした時、
「頑張れよ!」
……!!!
後ろから、声がした。
「頑張れって……何がですか?」
「色々だよ。東京に出てきたのは、何かの夢があって、その夢を叶えようとしてるからだろ?」
……。
「俺も、歌頑張るからさ」