オアシス


「はい……」

私は、何だか急に何かがこみ上げ準平の方を振り向くことができなかった。

そして、そのまま小走りで適当にどこかへ向かう。

だいぶ遠ざかり私はその場からタクシーを拾いウィークリーマンションへ帰った。



………………



家に着き、玄関で乱暴にスニーカーを脱ぎ捨てる。

フローリングの上にペタンと座り、テーブルの上に両肘をつきボーッとしていた。意味不明な疲れがどっと押し寄せその場から座ったまま動けない。喉が渇いていてジュースを飲みたいけど冷蔵庫まで行くのはおろか、立ち上がることさえ面倒くさくて仕方ない。

私は、菜々に電話していた。

「はい」

「菜々?」

「あ~瞳。どうしたの?」

「ごめんね」

「何が?」

「今日、一人でoasisのライブ行っちゃった」

「そうなんだ~!」

「怒らないの? 菜々に黙って一人で行ったんだよ」

「怒るわけないじゃ~ん! 瞳にだって楽しみはあると思うし。ライブ行くのも、それは瞳の個人の自由でしょ?」
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