オアシス
さりげなくミラーを見ると、聡の目が見えた。すると、ふと気がついたように聡がミラー越しに私の方を見た。ミラー越しに目が合い、私は慌てて目をそらした。しばらくしてから、またミラーを見る。今度は目が合わないように一瞬だけ見た。狭い後部座席で、私は肩を縮め小さくなりながら心臓のドキドキ音を抑えていた。すぐ隣にいる菜々に気づかれないように。
一時間ほど車は走り、ようやく目的地に到着。風があるせいか、暑さはそんなに感じなかった。むしろ心地良いくらいだ。駐車場からは、遠くに海が見えた。私達五人は、車のトランクから荷物を出し運んだ。
海辺にテントを張る。テント張りは男子の仕事と言わんばかりに私と菜々はテントには近づかなかった。時期的には、世間一般では夏休み中だが近くには客は一組もいない。貸し切り状態だった。どこまでも続く砂浜を、遠く目を向けると青や黄色の三角がポツリポツリと見える。あのへんまで行くとテントを張っている人達がいるのだろう。