空を泳ぐさかな 【短編】
「…いくら網を振り回しても、シャボン玉はとれないと…思うよ」


プラスチック容器のふたを閉めて、いつでもベンチから立ち上がれるように身構えた。

最近は、キレて手に負えない小学生も多いと聞くし。


気持ちがシャボン玉に向けられているうちはいいけど、自分に向かってきたらたまったものじゃない。

相手は小学生とはいえ、私は女の子なのだ。


「捕まえられるよ?」


返ってきた答えに、悪意とか殺気とかは全く感じられなかった。


それよりも、無邪気というか無垢というか、捕まえられる事が当たり前とでもいうような話し方だった。


少年の振り回した網の中で、バチンバチンとシャボン玉が割れる音がして、漂っていたシャボン玉は、一つもなくなった。

少年はゆっくり網を自分に近づけた。

そして、緑色の網の中に手を入れる。

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