空を泳ぐさかな 【短編】
手のひらを上にして、おずおずと差し出すと、少年は握った手を私の手の上でほどいた。


「お近づきのしるし」


私の手の上には紫色の紙に包まれたキャンディーが乗せられていた。


「…得意の手品?」

「うん。まあ、一番得意なのは透視なんだけどね」  


紙を剥がすと中から出てきたのは、薄紫の小さなあめ玉だった。

あめ玉を見て、はたと思った。

さっき押しつけられた小瓶を覗いてみる。

同じ薄紫色の玉。




…騙された。




「...もしかして、さっきのシャボン玉も手品?」


「さあ、それはどうでしょう」


少年は微笑んで、鰯雲を見上げた。


「明日は大雨だねえ」


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