リエヴェメンテ
魔王は、一瞬後に我に返りった。
ロープを切ろうと力を解放する。
鋭い音をたてて、かろうじで自由のきく右手に黒い炎が宿った。

「甘いよ。魔王」

シャンテは小さく指を鳴らす。
その瞬間小さく風が吹き抜け、炎が消えた。

「あんたの力の癖は良く知ってるよ」

勝ち誇ったように言われ、魔王はさらに大きな炎を産み出した。
配下の者達も正気に返ったようで、それぞれ力を解放し、シャンテに照準を合わせた。

「やれ」

魔王の合図で一斉集中砲火。
この場合魔王も巻き込まれるが、同族なので耐性がある。多少は痛いだろうが、この状態から脱け出せるなら安いものだ。

「だーかーらー、甘いんだって。忘れちゃったの?ヴィア」

呆れたように魔王を抱えていない右手をかざし、小さく魔法陣を展開した。
そして魔王は、子供の頃に呼ばれた愛称を呼ばれ、集中を切らした。

消えた黒い炎。
配下の者が放った力がこちらに衝突する。
シャンテが手の平を翻す。
半透明の盾が現れ、全ての攻撃を弾き返した。
弾き返された力は辺りの壁に衝突し、破壊する。
崩れ落ち瓦礫となる壁。

「げほっごほっ」
爆風の煙を吸い込み、魔王はむせる。
ロープはほどかれ、手を引かれ走りだしていた。


既視感。


昔、誰かとこうやって走り抜けた。
走り抜けたんだ。
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