リエヴェメンテ
ヴィアクユールをかばい、シャンテは大怪我を負った。
自分が災いを呼んだのだと、周りの大人達に言われ、二度と彼女の所へは行かなくなった。
そのうち、魔王になるための教育が始まり、その厳しさに記憶は埋もれていった。


それがどうして、今。


シャンテは自分より小さなヴィアクユールを、今度は担いで窓から飛び降りた。
待機していた灰色の翼竜が二人を背に乗せ羽ばたく。

「…どう、して?シャル」

シャル。シャンテと呼ばれるのを嫌がった彼女の愛称。
自分だけが知る彼女の名前。

「約束守りに来たんだよ。政治が内部分裂でガタガタらしいって聞いて、今ならヴィア連れ出せるって思ったし」

竜の手綱を操りながらシャンテは言う。
そしてヴィアクユールの金属の飾りで所々を留められた黒髪を一房手にとった。

「共に世界を見ませんか?我が君」

彼の青紫の瞳を見つめながらシャンテは言う。
硬直するヴィアクユール。
絞り出すように出たのは、どうして。というありきたりな質問だった。
< 5 / 8 >

この作品をシェア

pagetop