Best Love
「まぁ当然そいつらは信じなかったわけだ。そしてその女の子の腕をグッと引っ張った。」
そう、そして私は思わず目をつぶった。
けど、掴まれていたはずの腕は離されて、目の前には男達が倒れていた。
そして、さっきまでいなかった男の人が、私達と男達の間に立っていた。
「じゃあ先輩はその時の・・?」
「そう。君は放心状態だったからタクシーに乗せたんだ。」
あの時はいっぱいいっぱいで、先輩の顔をちゃんと見れなかった。
気付いたら私の乗ったタクシーは、家の前に止まっていた。
「でも僕はすぐに後悔した。勇敢でユーモア溢れる女の子の連絡先を聞いていなかった事を・・・・」
先輩はそう言って私の髪に片手をあてた。
くすぐったくて、自然に笑みがこぼれる。
「でも、奇跡は起こったんだ。月曜日、学校に行くと下駄箱で君を見かけた。自分の目を疑ったよ。でもこのチャンスを逃すまいと話しかけようとした時、不意に声が聞こえたんだ。『最近転校してきたあの女、可愛いのに重度の男嫌いだってよ。もったいねー。』ってね。今度は耳を疑ったよ。」
そう言って大袈裟に首をふった。
私は吹き出してしまい、口に手をあてて下を向くと、先輩の手にグイッと顔を上に上げさせられた。
「せ・・ん・・・ぱ・・・」
「それからしばらく君を見ていた。いきなり出ていって、男だからって理由で嫌われても嫌だからね。・・・・そして、昨日。僕はボタンを君以外渡す気になれないし、目立つ事をして警戒されても嫌だったから、教室で休んでいたんだ。
そしたら・・・・」
私が・・・・現れた・・・
「目、つぶって?」
先輩が私の髪にあてた手を、私の頭と一緒に引き寄せながら言った。
私は静かに、目を閉じた。