【短編】花咲か兄さん【企画】
肩と肩が触れた距離。
ドキドキしてる心臓の音が
花ちゃんにも
聞こえてるんじゃないかと
思うくらいの距離。
「花ちゃん……」
「う、うん……」
小さな白い手。
ゆっくりと包むそれだけなのに。
嫌じゃないかな?
こんな温かい日に手つないだら
熱いかな?
人前でなんて恥ずかしいかな?
花ちゃんのことを考えて
迷ってるフリして
本当は
断られたらどうしよう
他の人に笑われたらどうしよう
――って
自分のことばかり。
「次行こうか……」
僕の左手は何も掴まずに
握り締められたままポケットに
逃げ込んだ。
「……うん」
悲しそうな花ちゃん表情で
胸が痛んだ。
ごめん。
こんな意気地なしでごめんね。