【短編】花咲か兄さん【企画】


南と歩いていると、
前から陸上部が走ってきていた。


「陸上って何が楽しいんだろ?
ただずっと走るだけなんて
私には無理」



「本当だね。
何が楽しいのかな……」



そこまで私が言うと
南は驚いた顔で私を見ていた。


えっ、あの……何でしょうか?



「あんた達って一緒にいる時に
何を話しているの?

彼氏の部活のこととか
真っ先に浮かんでくる話題じゃん」


う……何って。


あれ?何話してたかな?



今日いい天気だねー。とか

お弁当の唐揚げは何でだか
テンションが上がるね。とか


明日は小テストがあって
嫌だね。とか?




あれ?これって……



「あんたさ。
それって別に付き合ってなくても
話せる話題よね」



言ってて自分でも
気付いてしまったけど

南の言葉はグサリと
私の胸を突き刺していった。


「あはは……
そ、そうだよねぇ」



下手な笑顔のまま
みっくんの方を見ると

みっくんが
小さく手を振ってくれた。


私も小さく手を振りかえす。




あの手が私の手を
包んでくれるのは何時になるの?







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