野球部のあなたとあたし
思わず指を差して叫んでしまった。


「さっきの超毒舌男!」

「え?夏川が?」


野球部のみんなが夏川と呼ばれた男の方に振り向いている。


困惑しているみたい……。


でも、あの顔立ちと背丈は間違いなく朝の……。


「夏川、おまえ真岡に言ったのか?」

「うわっ。野球部の恥」

「でも夏川が言うなんて意外~」

「てゆーか謝れよ~」


「すみませんでした」


いきなりあたしの前に立って、夏川が深々とお辞儀をした。


「……へ?」

「朝はいつも機嫌が悪くて、チャリぶつかって、イラついてて……。でも後々考えてみたら、女だったしさすがに言い過ぎだったかなって……。ほんとにすみませんでした」

「え、いや、あの、き、気にして……ないから……。謝んなくても」


いざ謝れると、許してしまうあたしに、沙弥が呆れている。


「まあ確かに夏川って、朝に弱いよな」

「まあ仕方ないっちゃ仕方ない」


野球部の人達も納得してるみたい。


「男に転生しろなんて言ってごめん。本心じゃないから」

「あ、そうなの……。本心じゃないなら、大丈夫だから」


とりあえず安心。


本心で言われてなきゃ、あたしは傷つかないから。


そこまで弱い人間じゃない。


ひたすらごめんと謝る夏川くんを、ちょっぴり可愛いと思っているあたしがいた。

< 12 / 59 >

この作品をシェア

pagetop