野球部のあなたとあたし
「美那。私の彼氏ね」

「いきなり何?」

「まあ聞いてよ。私の彼って、かっこいいじゃん」

「うん」


沙弥の彼氏は3組のサッカー部の人。


すごい優しいんだって、以前沙弥が自慢していた。


「私が告って付き合ったじゃん。だから、あっちがどう思ってるかってけっこうわかんないじゃん。それに加えて、クラスでも目立つ方だから女子と話すとこもけっこう見るんだよね」

「うん」

「やっぱ彼女としてはやるせないよね。女子と話して欲しくないけど、彼は私の所有物じゃないから、縛りたくてもあっちに迷惑がかかっちゃうでしょ?だから、いつも堪えてるんだけど……。ダメだよね、私」

「それは……」

「要するに、嫉妬しちゃってんのよ。私はめったに男子と話さないから、あっちが嫉妬することはないけどさ。だから、あっちが私のことほんとに好きなのかなって不安になる」

「それで……」

「嫉妬っていうのは、その人のことが好きだからなのよ。独り占めしたいって。結論は、美那も嫉妬してんのよ、夏川くんに」

「……そうなの?」

「じゃあ、夏川くんがいろんな女子と話してるのを見て、純粋に仲いいんだって思う?皮肉入らない?」


夏川くんが、いろんな女子と………。


想像しただけで、イライラしてきた。


「無理。絶対皮肉入る」

「だよね」

「嫉妬してるってこと?」

「そういうこと。あと一歩だね」

「あと一歩?どういうこと?」


沙弥がはーと、わざとらしくため息を漏らして、あたしの肩に手を置いた。


「美那」

「はい?」

「あなたは恋をしています」





は……?


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