野球部のあなたとあたし
バレンタイン当日。


緊張して、昨日は全然眠れなかった。


朝は夏川くんがいつ登校してくるかわからないから、放課後に渡す予定。


授業中も心臓がばくばくしちゃって、昨日の寝不足でも居眠りなんかできない。


それは、クラスの女子もみんな同じみたいで。


休み時間になれば、いつもより半オクターブ高い声が教室を飛び交っている。


みんな緊張と興奮が混じっているのが一目でわかる。


「いやあ、楽しみだねえ~」


そして沙弥も……。


みんなが発しているオーラに酔ってるみたいで……。


大丈夫なのか、こいつ……。


「美那ぁ、頑張りなよ~」

「沙弥、今は人の心配よりも自分の心配した方がいいんじゃないの?」

「いいのよ~。私達ラブラブなんだから~」

「聞いたあたしがバカだった……」


ほんとに酔ってるみたい……。




今はお昼休み。


女子同士でチョコを渡している様子が、教室のあちこちで見られる。


やっぱり男子には、お昼休みはみんなに見られるから、みんな放課後に渡すんだよね。


沙弥もそうらしいし。


「はい、沙弥」

「ありがと。私からも」

「ありがと」


沙弥からはトリュフ。


さすが彼氏がいる人は違う。


「放課後、頑張りなよ」

「はい……」

緊張で既にカチコチになっているあたしを沙弥がつつく。


「こんなんでわたせるのかねえ」

「真岡さん」



沙弥じゃない声で呼ばれた。


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