野球部のあなたとあたし
「な、夏川くん!?」


心臓がひっくり返ったかと思った。


噂をすれば影が差す。


それはまさにこのことで。


沙弥があたしの隣でニヤニヤしてる。


「ど、どうしたの?」

「木戸からの伝言で、担任に週番は後で職員室に来るようにって」

「あ、ありがとう……」


なんだ。伝言か……。


でもたった一言を返すだけでいっぱいいっぱいで。


……て、なんで夏川くんが?


木戸くんから?


だったら、木戸くんが直接あたしに伝えればいい話だよね?


それを他のクラスの人に伝えさせるって、かなり不自然じゃない?


ぱっと、教室の端にいる木戸くんを見たら、あたしに向かって片目をつぶってみせた。


まさか……バレてる!?


「な、夏川くん」


立ち去ろうとする夏川くんを呼び戻そうとしたけど、小さい声しか出なくて。


机の横にかけていた紙のバッグから一つの袋を取り出して、夏川くんに渡した。


「これっ」


夏川くんを直視できなくて、それしか言えなかった。


少し間が開いた後、夏川くんはそれを受け取って、ありがとうと呟くのを聞いた。
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