野球部のあなたとあたし
………ていうか。



「なんであたしが野球部の試合観戦しなきゃなんないのかなあ~」

「だって、木戸くんに頼まれたんだもん~」


ルンルンしている沙弥を、横目でジロリと睨み付ける。


二度と野球部の試合は見たくなかったのに。


嫌でも悠が出てるから。



野球は好き。


野球をするのは下手だけど、見るのは大好き。


でも悠にフラれてから、野球を見る度に悠を思い出してしまうから、しばらく見ていなかった。



今日だって、沙弥と買い物しようって言ってて、沙弥にいい所があるって言われてついて行ったら、スタジアムで。


なんか怪しいと思ったら、これだもん。


「なんか企んでる?」

「まさか~。美那と夏川くんのヨリを戻そうなんて、まさかそんなことを~…」

「企んでたのね」


あはは~と笑う沙弥。


ヨリなんか戻さないって言ってるのに。


せめて合コンとかで新しい出会いを見つけようって言って欲しかった……。



こんな感じでいつもお調子者の沙弥だけど、いつもあたしのことを考えてくれてる。


今日も木戸くんから言われたとか言って、沙弥なりに考えてくれたんだろうな。


「……沙弥、ごめんね」

「何よ、急に」

「いつも心配ばっかりかけちゃってごめんね」

「……美那」


9月にしては肌寒い風が吹き抜ける。


なんか泣きたくなってきた……。


もっと強くなれたら、あたしがこんなに悩むこともなかったのに。


たぶん悠のこともきっぱり忘れられたのに。


……まだこんなに悠のことを考えちゃうなんて。

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