野球部のあなたとあたし
「私はさ、美那に幸せになって欲しいの」


沙弥がストローでジュースを啜る。


「……いきなり何……」

「まあ高校生のうちに幸せを掴んだって、大人になってからどうなるかなんてわかんないし、予想もつかないけどさ。私としては見てらんないのよ」

「何を?」

「美那が苦しんでるとこ。夏川くんとのことがあるから、新しい恋をすることも、夏川くんとヨリ戻すこともできない。ずっと黙ってたけど、わかってたよ」

「……うん」

「確かに夏川くんとヨリを戻して欲しいと思うよ。木戸くんも、そうなって欲しいって言って今日誘ってくれたの。でも美那がどうしても嫌ならそれでいい。新しい出会いで幸せになれるかもしれないから」

「……うん」


沙弥の気持ちがすごく伝わってくる。


沙弥も木戸くんも、あたしのことすごく考えてくれてたんだ。


「だから、美那には決着をつけて欲しい。もやもやしてたこと、全部夏川くんにぶつけて、すっきりして欲しいの。……じゃなきゃ、私もう美那のこと見てらんない」

「ごめん……沙弥」


あたしは、ずっと周りの人も苦しめていたんだ。


あたしばっかり苦しい思いをしていたって思ってたけど、あたしなんかまだまだ序の口だったんだ。


「わかった。あたし、悠と話つける」

「頑張って」


沙弥が笑って、あたしの背を叩いた。

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