THE ウェーブ
男は
ワシを追いかけようと
玄関の前に置いてある
カマを手にとり
ワシの方へと
すさまじい速さで
追いかけてきた

ワシは森へ逃げ込んだ

それでも
ズンズンと
追いかけてくる

ワシは
無我夢中で走った

後ろを振り返ると
男の姿はなかった

ハァハァと
切れる息を
押し殺しながら
元の方向へ
足を忍ばせながら
戻った

その時
背後から
カサッと音がした

振り返ってみると
男がカマを
振りかぶっていた

必死に逃げた

逃げている途中
真横に突き出た枝で
足をやった

見事に枝の太さに
えぐれ
血がダラダラ流れてくる中
それでも
必死に逃げた

だが
それまでのように
走れる訳もなく
男は
どんどん近づいてきた

その時
パトカーのサイレンの音が聞こえてきた

ワシは自分に
もう少しだと
言い聞かせ
力を振り絞って走った

やがて森をぬけ
パトカーが到着した

男は
森から出てきた所を
取り押さえられた


息子もつれていかれた


ワシは一気に
力が抜けた

足の手当てをしてもらった

その足の手当てのおかげで
今の愛する妻と
であったのさ

その傷がこれだよ

今でもくっきり
のこっておる

最後にそいつの顔を
みてやろうと
取り調べ室を
見に行った
< 8 / 9 >

この作品をシェア

pagetop