しょーと*しょーと
『ふおお!?』
さっきまで遠くから見つめていた方が
こんなに近くにいらっしゃる!!
あたしがまた変な声を上げて一人テンパっていると、
「ごめん、驚かせちゃった?」
と言いながら、矢野くんはふにゃっと笑った。
矢野くんの笑ったときの擬音は
ニコッとかじゃなくて、絶対"ふにゃ"だと思う。
柔らかくて優しい笑い方。
見ているだけで癒されてしまう。
「本田さん?」
『えッ』
何も返事をしないあたしを不思議に思ったのか、
彼はあたしの顔を覗き込んだ。
――ギュンッ
その軽く上目遣いになっている表情があまりに可愛くて、
あたしの心臓はキュンを通り越してギュンってなった。
『な…なに?』
「あの…さ、」
『うん?』
矢野くんは少し口ごもっていた。
なんだか言いにくい話みたい。
―あ、
矢野くんて手が綺麗なんだな。
こんなに近くで見たの初めてだから、新しい発見!
「――俺と付き合って」
………。
矢野くんの美しい手に夢中だったあたしは、
彼の言葉に一瞬思考が停止した。
『……あの、今…なんて?』
矢野くんの顔に目を移すと、
可愛い造りをした彼の顔が、なんだか少し赤いような気がした。
「俺、本田さんのことが好きなんだ」
う、うそ………
あの、みんなのアイドル矢野祐希くんが!?
あたしなんかのことを好き!?
「なに、みんなのアイドルって(笑)」
また、ふにゃっと笑う矢野くん。
てか、今の声に出てた?
あぁ、あたしの悪いクセが。