ありがちな恋
どうも頭の弱い子らしい。何十年の付き合いなのに
いまさら気づくとは不覚だ。

「今のはノーカン!でもさ、なんて呼んだらいいの?」

そう言われると思いつかないのが人ってもので、俺はすぐに
答えられなかった。

「ん~、名前で呼ぶには学校じゃダメだしな~」

思案している最中愛奈はいい案が思いついたらしく

「じゃあ、後輩らしく先輩ってのは?」

さっきの訂正。実は頭の強い子でした。「先輩!」
って言葉にはなんともいえない魔力がある。今までは一番
下の学年でそう呼ばれることなんてなかったからな。いや
変な意味じゃないぞ?うん。悟られないように俺は言葉を
愛奈に返した。

「それで行こう!いや本当にぴったり来るわ。
俺が先輩でお前は後輩。これほどぴったり来る呼び方があるとは!
日本の社会は上下関係が激しいからな!それの練習にもちょうどいい!
社会の勉強になるな!これでお前も社会人の一員だな!」

「う、うん。そ、そうだね。・・・なんかお兄ちゃんがおかしい」

最後にボソっと言った言葉は聞こえてなかったことにしよう。
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