侵す領域、笑うキミ。
「彼氏とはどう?」

背中に声をうけながら背表紙を引いては一瞥し、また戻す。

どれも私の興味を引いてはくれない。

「来週は部活が休みだから水族館デートするの。楽しみだなぁ」

声の高さがわざとらしくて思わず苦笑した。

…嫉妬するはず、ないのに。

「じゃあ来週は来ないの?」

「そうだね」

彼の声が低くなった気がして、膨れ上がる期待を気の所為だと振り切る。

再び背表紙を引く。

戻そうとした指が突然絡めとられて、本が床に落ちた。
< 4 / 5 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop