ハカナキカヲリサクハナノヨウニ
あれから、もぬけの殻で過ごした日々。
社会にもまれた、というより、
もみくちゃにされて放り出された、
虚無に等しい一日を何度となく繰り返し、
縋りたくなる過去は、
嫌らしいくらい時が止まっていて、
僕はなにひとつ手に付かないでいる。
仕事も、社会に溶け込むことも。
†
3年経った今、仕事は転々のあげくにプー。実家住まいも、居間の風景はすっかり忘れた。
親がなにも言わなくなって随分経つ。
最初のバイトのときか、
大学受験も全滅し、
予備校に入ることを拒んだ僕は、
初めて親父をなぐった。
「いつまでもそんな生活が許されると思うな!」
「…」
「どうした?当たり前のことだろう!ただでうちにいられるほど、甘くないんだよ、世の中は」
「…わかるかよ」
「…なに」
「これからの自分が見えてこないのに、世の中の事なんか見ていられるかっ!」
言うや否やのことだった。
右ストレートが親父の頬にめり込まれてた。
親父はその場に倒れ、しばらく呆然としていた。
僕は不思議な気分だった。
その時はそれが無駄なこととは思わず、
大きな山を乗り越えた気分に酔い、
勘違いをした。
母さんはこんな風に僕がなってから、
世間にならって、
まるでいないもののように、
僕を扱った。
僕は最初清々としていたけれど、
あれだけの時間で静寂が流れると、
空しさを覚えてくる。
止まったままの時間は、
いまだ動き出さない。
世の中はまた目まぐるしく動いたけれど、
僕は一切立ち止まったままだった。
今日もまた終わる。灰色の空のまま。
僕はリサイクルショップで時間を潰していた。
ふと楽器コーナーに立ち寄ると、
いかにも高価なレスポールやテレキャスたちが、
どこの素性も知れないバッタモンと共に並べられていた。
良き出会い、酔いしれた日々を経て、揚句、
使い物にならなくなれば、誰のあてもなくまた良かったあの頃を待ち続ける。
悲しいけれど、現実はこういうことだ。
救われる日を待つより、
――いいかげん動き出せ。
無言の声が痛く感じたときだった。
見慣れた気配を片隅より感じたのは。
社会にもまれた、というより、
もみくちゃにされて放り出された、
虚無に等しい一日を何度となく繰り返し、
縋りたくなる過去は、
嫌らしいくらい時が止まっていて、
僕はなにひとつ手に付かないでいる。
仕事も、社会に溶け込むことも。
†
3年経った今、仕事は転々のあげくにプー。実家住まいも、居間の風景はすっかり忘れた。
親がなにも言わなくなって随分経つ。
最初のバイトのときか、
大学受験も全滅し、
予備校に入ることを拒んだ僕は、
初めて親父をなぐった。
「いつまでもそんな生活が許されると思うな!」
「…」
「どうした?当たり前のことだろう!ただでうちにいられるほど、甘くないんだよ、世の中は」
「…わかるかよ」
「…なに」
「これからの自分が見えてこないのに、世の中の事なんか見ていられるかっ!」
言うや否やのことだった。
右ストレートが親父の頬にめり込まれてた。
親父はその場に倒れ、しばらく呆然としていた。
僕は不思議な気分だった。
その時はそれが無駄なこととは思わず、
大きな山を乗り越えた気分に酔い、
勘違いをした。
母さんはこんな風に僕がなってから、
世間にならって、
まるでいないもののように、
僕を扱った。
僕は最初清々としていたけれど、
あれだけの時間で静寂が流れると、
空しさを覚えてくる。
止まったままの時間は、
いまだ動き出さない。
世の中はまた目まぐるしく動いたけれど、
僕は一切立ち止まったままだった。
今日もまた終わる。灰色の空のまま。
僕はリサイクルショップで時間を潰していた。
ふと楽器コーナーに立ち寄ると、
いかにも高価なレスポールやテレキャスたちが、
どこの素性も知れないバッタモンと共に並べられていた。
良き出会い、酔いしれた日々を経て、揚句、
使い物にならなくなれば、誰のあてもなくまた良かったあの頃を待ち続ける。
悲しいけれど、現実はこういうことだ。
救われる日を待つより、
――いいかげん動き出せ。
無言の声が痛く感じたときだった。
見慣れた気配を片隅より感じたのは。