海の見える城
決して動きやすくはないが式で着ていたドレスよりは軽くて夏の季節にぴったりな涼しげなドレスに着替え終わったレティシアは、リーナに煎れてもらった紅茶に口をつけた。
「美味しいわ。リーナの煎れるお茶、私好きよ。」
「え!あ、ありがとうございます!でも私の、じゃなくて…紅茶の葉がいいのですよ。」
「そんなことないわ。」
カップを置き、涼しい風が流れてくる窓に目を向けると何処までも青い海が広がっていた。
空の青さより勝っているその色はとても美しかった。
それと一緒にあのアルベルトを思い出してしまう。
海の色と彼の髪や瞳が似ているせいなのか…。
海から視線を背けようとした時、リーナが話しかけてきた。
「私、この国が好きなんです。」
「え…?」
リーナは海を眺めながら続けた。
「国というより…海ですけど…。海を見れば何だか元気になれるんです。落ち込んだ時に見れば、何をちっぽけなことでくよくよしてるんだろうって、もっと頑張ろうって思えるんです。だから好きです、この海に囲まれた国が…。」
そう嬉しそうに話すリーナを見て、レティシアの胸がズキリと痛んだ。
「だから…レティシア様にもこの国を好きになってもらいたいんです。少しずつでいいので…。」
「…そうね…。少しずつ…。」
「はい!…あ、そういえば、」
…―――リーナ…
「果物ナイフ何処にあるか知りませんか?昨日まで果物の側に置いておいたのですが、今日みたらなくなっていて…。違うところに置き忘れてしまったんでしょうか…。」
「…さあ…私は知らないわ…。」
…ごめんなさい…―――。