海の見える城
そのレックスが不意にアルベルトに話しかけてきた。
「兄上、ご結婚おめでとうございます。こんな美しい方が妻となるなんて羨ましいです。」
そう言い、にっこりと微笑むレックスに対してアルベルトは苦々しい顔をした。
「だったら、お前に譲ってもいいが…?」
「御冗談を。ほら、レティシア様が悲しみますよ。」
今度はレティシアを見てそう言う。
アルベルトと違って人懐っこい性格のようで、そのレックスの表情にレティシアは面食らった顔をした。
もし結婚するなら、こんな明るい人としたかったと心の中で密かに思ったレティシアだったが、もう遅い。
すでに結婚してしまっていたから…。
「…部屋に戻る。」
アルベルトは急に席を立ち、出て行ってしまった。
「レティシア様、兄上をよろしく頼みますよ。」
「…はい…。」
本心ではない返事をしてレティシアも席をはずし、部屋を出た。
「まあ…愛想のない姫だこと。」
レティシアが出て行った後、王妃は不機嫌そうに呟いた。
「それに…」
ちらりとレックスに視線を向け、
「レックス、あなたもあの姫を誘惑なんかしないでくださらない?私の息子の妻が夫より弟のあなたと仲がよいと噂されたら、ただじゃ済みませんよ。あなたは側室の子なんですから。」
冷たくそう言い放つ王妃にレックスはさっきからの表情を崩さず頷いた。
「分かってますよ。義母上…。」