海の見える城
レティシアはアルベルトの後を少し離れて歩いていた。
回廊にある窓からは月の光が差していた。
辺りは静かで、ただ二人分の足音が響いていた。
「お前…」
「?」
アルベルトは足を止め、振り返った。
レティシアもその場に立ち止まった。
「覚えてないのか?」
「え…」
いきなりそんなことを言われ、レティシアは訝しげな顔をした。
覚えてないのかって…どういうことなのだろう?
「いや…何でもない。」
一瞬だけ…いや、見間違いかもしれない。
アルベルトが何故か悲しそうな顔をしたのをレティシアは見た。
だがすぐ見間違いだと考え直した。
アルベルトは再び歩き出し、奥へと行ってしまった。
一人その場に残ったレティシアは、アルベルトの言葉に疑問を持ったが気にしないことにした。
そして窓の側に近付き夜空を見上げた。
「お父様、お母様、兄様…」
きっとこの空の上から自分を見守っていてくれていると信じてる。
それなのに自分はこれから酷いことをしようとしている…。
「ごめんね…。こんな私を許して…―――。」