海の見える城
「レティシア様、頑張ってください!」
夜になり、リーナは興奮気味にレティシアの手を両手で握る。
これから寝室に行き寝るだけというのに、何故リーナが嬉しそうに頑張れと応援するのか、レティシアは疑問に思った。
そんなレティシアに気にせず、リーナは熱く一人で話す。
「あのアルベルト様にご寵愛を頂けるなんて、羨ましい限りです!そしていつの日かお二人のお子様が出来るんでしょうね…。きっととっても可愛らしいお子様でしょう!」
そこまで言ったところで、リーナが何を期待しているのかレティシアは分かった。
「なっ…ちょっとリーナ…!私はそんなこと…」
「あ、照れてます?無理もないですよ、新婚初夜ですものね!でも大丈夫です!きっとアルベルト様も優しくしてくれますよ!」
こうなったらリーナは止まらない。
何が大丈夫なのか…レティシアは呆れた目でリーナを見ていたが、壁時計を見て就寝の時間に気付いた。
「じゃ、じゃあ…寝室に行くわ。リーナも早く休んでね。」
「あ、はい!ではお休みなさいませ!」
にこにこ…いや、にやにやしながらリーナは部屋を出て行った。
レティシアは深い溜め息をつき寝室へと続くドアに目を向けた。
「…今日で終わりよ。」
レティシアが寝室に入ると、まだアルベルトは来ていないようだった。
リーナの話もあってか多少緊張していたが、アルベルトがいないことを知り、肩の力が抜けた。
大丈夫だと、自分に言い聞かせ寝台へと腰かける。
すると、アルベルトの部屋の方のドアが開いた。
びくりとレティシアは身を震わせたが、すぐ落ち着きこちらに向かってくるアルベルトを睨むようにして見た。
「なんだ…もう来ていたのか。」
そう言い、アルベルトはレティシアと反対のところに座った。
…と思ったら、そのまますぐに布団の中へと入ってしまった。
「……。」
横になってもう寝そうなアルベルトをぽかんとした顔でレティシアは凝視する。
何も…しないのかと。