海の見える城

するとレティシアの視線が気になったのか、アルベルトは怠そうに見上げた。


「新婚初夜だからと言って、そんな気分じゃない。…それにお前を抱く気もさらさらない。」

「…は?」

「…胸は小さいし、抱き心地悪そうだし。」

「なっ…!?」


思いも寄らぬアルベルトの言葉にカァッと顔が熱くなる。


怒りと恥ずかしさで今にも掴みかかってきそうなレティシアを無視して、アルベルトは身体を反らして寝ようと目を閉じた。


「あなたねぇっ!!普通そんなこと言う!?最っ低!!」

「黙れ、煩い。」

「っ…」


アルベルトの低い声でレティシアは黙り込んだ。


「早く寝ろ。」

「……。」


渋々とレティシアは布団の中に潜り込んだ。


同じ布団の中なのに、アルベルトとレティシアの距離は遠く、微妙な空間が出来ていた。


…―――悔しい。


隣に寝ているアルベルトをちらっと見て、レティシアは唇を噛んだ。


アルベルトの寝息を聞いて、レティシアは隠していたものをそっと取り出す。


あのリーナが探していた果物ナイフだった。


そして静かに起き上がる。


「…さよなら。」


敵の国の姫だからといっていつか殺されるくらいなら、この憎き国の王子を亡き者としてしまおう…それがレティシアの考えだった。


第一王子を殺したと知られれば、間違いなく死刑だ。


どの道レティシアには命はない…。


―――だからいっそのこと…。


鋭い刃をアルベルトの真上に振りかざす。


そして…―――。


グサッ


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