海の見える城
ナイフの刃が刺さったのは白いシーツ。
手元が狂った訳じゃない。
「っ…」
「…いつか刺されると思ってたが…まさか新婚初夜だとはな。」
アルベルトに刺さるというところで、彼に交わされたのだった。
アルベルトは起き上がり、暗闇でも分かるような鋭い目でレティシアを見下ろした。
「ねっ…寝てたんじゃ…」
アルベルトは焦るレティシアのナイフを持った腕をぐいっと自分の方へ引き寄せた。
「はっ…これで俺を殺そうとしたのか?笑える。」
冷たい笑みを浮かべ、そのナイフをレティシアから取り上げた。
「こんなもので俺は殺せない。命なんて毎日狙われるんだ。例え寝てたとしても、相手の殺気ですぐ反応できる。」
いつの間にかレティシアの身体は震えていた。
―――殺される…。
今になって恐怖が込み上げてきた。
「殺されると思ってるのか?」
「……。」
「…簡単に死なせてなんかやらない。」
そう言うや否や、アルベルトはレティシアの唇を奪った。
「!?」
抵抗する間もなかった。
「…な…にを…」
やっと喋れるようになると、レティシアは我に返って目の前のアルベルトを睨んだ。
「言っただろ。捨てるのも殺すのも全て俺次第。お前は俺に従ってればいい。勝手なことはさせない。」
その言葉を聞いて愕然とするレティシア。
結局自分には自由なんてない。
これから先ずっと苦しんでいきていかないといけないのだ…。
この男の元で…。