海の見える城
「いつまでそうしてるつもりだ?」
「……。」
一向に顔を上げずに黙ってるレティシアにアルベルトは小さな溜め息をついて、リーナに命じた。
「妻の分の朝食はこっちに持ってこい。…後は頼む。」
「は、はい…承知しました。」
アルベルトが部屋を出て行くのを見送って、リーナは身体の力が抜けてしまいそうになった。
だが自分にやることがあるため、こうしてなんかいられないと思い、レティシアに振り返った。
「レティシア様、こんなところで座ってちゃだめです。とりあえずソファーにでも座りましょう?」
リーナはまるで抜け殻のようなレティシアを立たせて、支えながらソファーへと向かった。
そしてレティシアをソファーに座らせ、リーナは急いで部屋から出て行った。
レティシアの瞳には窓の外から見える海が映っていた。
「レティシア様、お待たせしました!朝食ですよ!」
さほど時間が掛からずに朝食を持ってきて、リーナはテーブルの上に食事が載った皿を並べ始めた。
「今日はいい天気ですよ!朝食をちゃんと食べて、その後庭を散歩しましょう!」
「……。」
「庭に咲く薔薇が素敵なのですよ!」
「リーナ…」
「はい?」
今日初めてレティシアはリーナに声を掛けた。
それは今にも消えそうなか細い声だった。
「…ごめん…なさい…。」
「レティシア様?」
「私は…貴女を裏切ったことをしたのよ…。」
リーナはこの海に囲まれている国が好きだからレティシアにも少しずつでいいから、この国を好きになってほしいと昨日話したばかり。
それなのにレティシアはこの国の王子を亡き者にしようとしたのだ。
国の象徴でもある王族の一人を。
リーナが好きだと言った国の象徴を…。