海の見える城
その声の持ち主はレティシアの少し後ろで止まった。
どんな顔なのか興味を持つが、振り返って見ることが出来ずレティシアは黙って様子を窺うことにした。
「彼女がお前の妻になるレティシアだ。」
後ろにいる人物は夫になるアルベルトだと分かると、自分を見て彼はどんな反応をするのかレティシアは気になった。
…視線が背中に刺さる気がした。
少しして、アルベルトはレティシアの正面へと足を進めた。
レティシアは自分より背の高いその男の顔を見上げた。
「……。」
一言で言えば、青。
それがアルベルトの第一印象。
藍色の少し長めの髪と切れ長の深い青色の瞳。
「…敵国の姫…。」
それだけ呟いてアルベルトは視線をレティシアから王へと移した。
「父上、本当に良いのですか?敵国の姫を私の妻になどにして…」
「わしは構わん。後はお前が好きにするといい。捨てても殺しても…お前の自由だ。」
まるで自分は玩具だと感じた。
父親が息子に玩具をあげているような…そんな二人の会話。
玩具にされるくらいなら、死んでしまいたい…。
ぼんやりそう思ってると、目の前のアルベルトが動いた。
そしてレティシアに再び視線を戻した。
「…式は明日だ。」
「式?明日?」
「国民にも知らせる必要があるからな。」
急な話で戸惑いながらも、レティシアは頷いた。
アルベルトとの会話はそれだけだった。
だから彼がどんな人なのか…レティシアにはまだ分からなかった。