海の見える城
全体的に明るく、広い。
大きな窓とバルコニーから差す外の光。
カーテンが涼しげな風でふわりと揺れる。
座り心地の良さそうなソファーと綺麗なテーブル。
前の部屋にはなかったドレッサーやクローゼットなどもあった。
「そこにドアがあるが、その先は寝室。その向こうには俺の部屋が続いてる。何かあったら呼べばいい。」
驚きで声が出ないレティシアに構わず、淡々とそう言ったアルベルト。
こんな部屋を用意してくれるとは思ってもみなかったレティシアは、ふと冷静になって考えてみた。
そうだ…自分は第一王子の妻になったんだ、世間体を気にして嫌でもこんな部屋を用意したのだ…と。
王子の妻を暗い部屋に閉じ込めていると噂されれば、流石に民たちもいい顔をしないだろう。
決して“レティシア”の為に用意されたものではないのだ。
あくまで“第一王子の妻”の為のものなのだ…。
レティシアは自分自身を落ち着かせるように、息をゆっくり吐きアルベルトに向き合った。
「分かりました…。わざわざありがとうございます。」
「ふん…やけに素直だな。もっと反抗するかと思った。」
「良い部屋まで与えてもらって反抗なんて出来ないわ。それに今更貴方に何を言おうが、もう遅いのよ。…何もかも。」
「……。」
アルベルトは視線を落としたレティシアを無言で見下ろした。
そしてレティシアの金色の髪を眩しそうに目を細めると、足を動かした。
「俺はこれから執務がある。夕食まで好きなように過ごせばいい。」
そう言ってアルベルトは自室へと繋がるドアの向こう側へと行ってしまった。
それと同時に入口のドアからリーナが入ってきた。
「レティシア様、お疲れ様でした。」
「リーナ…。」
「さ、お着替えしましょう?レティシア様にぴったりのドレスを用意しました!」
「ええ…。」
リーナの笑顔を見てレティシアはほっとした気持ちになった。